2025年3月14日、マーク・カーニー氏が第24代カナダ首相に就任しました。
ジャスティン・トルドー前首相の正式な辞任からわずか1時間後の就任で、カナダの政治にとって大きな転換点となりそうです。
カーニー氏が就任当時に打ち出した移民政策について解説します(2025年5月13日からは、レナ・メトリッジ・ディアブ氏が移民大臣を務めています)。
【2026年9月更新】この記事は、マーク・カーニー氏が首相に就任した直後で、2025年4月28日の連邦総選挙より前の2025年3月に執筆したものです。この総選挙ではカーニー氏率いる自由党が勝利し、2025年5月13日からはレナ・メトリッジ・ディアブ氏が移民・難民・市民権大臣を務めています(2025年3月〜5月はレイチェル・ベンダヤン氏が担当)。本文中の数値は2025〜2027年の移民受け入れ計画に基づくものです。2025年11月に発表された2026〜2028年の移民受け入れ計画では、永住権の受け入れ目標が各年38万人とされ、一時滞在者の新規受け入れもさらに削減されています。最新の政策はカナダ移民局(IRCC)の情報をご確認ください。
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移民受け入れに上限を設定
近年、カナダの移民受け入れ数が急増していますが、新首相のカーニー氏はカナダの移民制度について「受け入れ能力を超えた移民の増加」を状況を問題視しています。そのため、持続可能なレベルに戻るまで移民受け入れに上限を設定する方針を明らかにしました。2025年2月に発表された政策文書では「パンデミック以前の水準に戻るまで一時的な上限を設ける」と記載されています。
しかし、具体的な数値や影響を受ける永住権プログラムの詳細はまだ明らかにされていません。
カナダ国内滞在者の永住権取得を優先
カーニー氏は、ここ数年で400万人以上がカナダに入国したと指摘しています。新政権では既にカナダ国内に滞在している外国人の永住権取得を優先し、2025年には「カナディアン・エクスペリエンス・クラス(CEC)」を通じて82,980人の受け入れを計画しています。この方針はトルドー前政権の「国内滞在者優先(In Canada Focus)」政策の継続となります。
外国人労働者の流入抑制
パンデミック中に外国人労働者の受け入れが急拡大しましたが、カーニー氏はこの流れを制限するとしています。2025年から2027年にかけての移民計画では、LMIAが必要な就労ビザの発給数は年間82,000人で維持。
一方、LMIA免除の就労ビザは2025年に285,750人、2026年に128,700人へと段階的に削減される予定です。
留学生制度の見直しと財政支援
カーニー氏は、留学生の受け入れ制限について明確な発言はしていませんが、「カナダの高等教育機関が政府の支援を十分に受けているか」という問題を指摘しました。
2024年に政府が留学生数の制限を発表したことで、多くの教育機関が財政難に直面しています。例えば、セネカ・カレッジではキャンパス閉鎖、シェリダン・カレッジでは40プログラム停止、ウォータールー大学では雇用凍結が実施されました。カーニー氏はこうした問題を踏まえ、教育機関が留学生に過度に依存せずに運営できるよう政府の財政支援を強化することを提案しています。
住宅危機への対策強化
カナダでは住宅不足が深刻化しています。カーニー氏は「住宅計画を大幅に加速(スーパーチャージ)する」と述べ、建設業界への投資を増やす考えです。具体的には、以下の取り組みを行う予定です。
- 建設労働者の育成・訓練強化
- 見習い制度の拡充
- 建設業界への財政支援
ただし、公営住宅の直接建設に連邦政府が資金提供を行うかどうかは、まだ決定されていません。
移民が支えるカナダの国民性
カーニー氏は「カナダは移民を歓迎する国であり、移民の統合をスムーズに進める国である」と述べています。移民はカナダの経済成長だけでなく、国のアイデンティティ形成にも重要だと強調しました。引き続き積極的な移民政策を推進していくことを明言し、移民の受け入れを前向きに捉えています。
マーク・カーニー新首相の経歴
カーニー氏はノースウエスト準州出身で、アルバータ州エドモントン育ち。両親は教師で、ハーバード大学で経済学を専攻した後、オックスフォード大学で修士号・博士号を取得しています。
主な経歴は以下の通りです。
- ゴールドマン・サックスに10年以上勤務
- カナダ銀行総裁(2008~2013年)
- イングランド銀行総裁(2013~2020年)
- 国連の気候変動対策・金融特使(2020年~)
- ジャスティン・トルドー政権の非公式アドバイザー
- 2025年1月に自由党党首選出馬、同年3月に首相就任
今後の政治的展望
この記事の執筆時点では、カーニー首相がどの程度の期間政権を維持できるかは不透明でした。次回の連邦選挙は2025年10月20日までに行われる予定で、議会再開後に野党が不信任案を提出する可能性もあり、早期の解散総選挙も考えられていました。実際に2025年4月28日に前倒しで連邦総選挙が行われ、カーニー氏率いる自由党が勝利したため、カーニー氏は引き続き首相を務めています。
まとめ
マーク・カーニー新首相は、移民政策の見直しを含むさまざまな課題に取り組んでいくことになります。移民の受け入れ上限の設定や国内滞在者の永住権取得の優先、外国人労働者数の抑制、住宅危機対策などが今後の焦点となるでしょう。
今後のカナダの移民政策がどのように変化していくのか、引き続き注目が必要です。
移民コンサルタント
白石 有紀 (Yuki Shiraishi)
アメリカミシガン大学にて学士取得後、ニューヨークでマーケティングコンサルタントとして働く傍らニューヨーク市立大学MBAコースに就学。その後日本での旅行会社マネージャー経験を経て、カナダでのイミグレーションの仕事へ。2010年から移民コンサルタントとして活躍。白石ビザJPカナダ代表。
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