カナダで永住権を目指す場合、どのような仕事を選ぶかは非常に重要なポイントのひとつです。 特に近年は、カナダ政府が労働力不足への対応や経済成長を目的として、特定の分野・職種を重視する動きが続いています。
その中でも、以前から需要の高い職種のひとつとして注目されているのが、Early Childhood Educator(ECE)と呼ばれる保育士です。2026年8月10日、カナダ政府は、ECEの採用・定着やキャリア形成を支援する新たな取り組みを発表しました。
今回の発表は、カナダが今後も保育サービスを拡大していく中で、それを支える保育士(ECE)の人材確保にも力を入れていくことを示すものです。これからカナダでキャリアチェンジを考えている人にとって、保育士(ECE)は引き続き検討する価値のある職種のひとつと言えるでしょう。
カナダ政府が保育士(ECE)の人材確保に最大540万ドルを投資
今回、カナダ政府が発表したのは、ECEの採用や定着を支援するための新たな取り組みです。政府は、Sectoral Workforce Solutions Programを通じて、2027年3月31日まで最大540万ドルを投資するとしています。
この取り組みでは、保育士(ECE)の人材不足に対応するため、以下のような施策が予定されています。
- ECEの採用・定着を支援
- ECEのNational Occupational Standards(国家職業基準)を更新
- 労働市場に関する情報を改善
- ECEの仕事の変化に合わせて人材育成のツールを近代化
- キャリア形成、メンタリング、専門能力開発の機会を支援
つまり、単に「保育士をもっと採用する」というだけではありません。保育士(ECE)を長期的なキャリアとして続けていけるよう、人材育成やキャリア形成、職場への定着まで含めて支援していく取り組みです。
今回のプロジェクトは、Colleges and Institutes Canada(CICan)、Canadian Child Care Federation(CCCF)、L’Association des collèges et universités de la francophonie canadienne(ACUFC)の3団体が中心となって実施します。
カナダでは保育施設・保育枠そのものも拡大
今回のニュースで、もうひとつ注目したいのが、カナダ全体で保育サービスの拡大が進められていることです。
カナダ政府は、2021年以降、州・準州に対して、Canada-wide Early Learning and Child Care(ELCC)systemの構築・維持のため、2031年3月までに580億ドル以上の連邦資金を発表しています。
カナダ政府は、2021年以降、州・準州に対して、Canada-wide Early Learning and Child Care(ELCC)systemの構築・維持のため、2031年3月までに580億ドル以上の連邦資金を発表しています。また、各州・準州では、これまでに25万か所以上の新しい保育枠を創設するための取り組みが発表されています。
保育料を抑え、より多くの家庭が利用できる保育環境を整えるためには、保育施設を増やすだけではなく、そこで働く人材も必要になります。つまり、カナダの保育業界は以下のような構造になっています。
- 保育サービスを拡大する
- 保育施設・保育枠が増える
- そこで働く保育士(ECE)が必要になる
今回の政府によるECEへの人材投資は、現在の人手不足への対応だけでなく、今後拡大していく保育サービスを支える人材を確保するという意味でも重要な取り組みと言えるでしょう。
今後もしばらく保育士(ECE)の需要は続く?
今回の政府発表だけをもって、「保育士の仕事が将来にわたって必ず安定する」と断言することはできません。
また、保育士の資格制度や求人状況、待遇などは州によって異なります。
しかし、今回の発表から読み取れるのは、少なくともカナダ政府がECEを、今後のEarly Learning and Child Care systemを支える重要な人材として位置付けているということです。
保育施設や保育枠を増やすのであれば、そこで働く保育士も必要になります。
さらに、今回のように政府がECEの採用・定着、人材育成、キャリア形成まで支援する取り組みを行っていることを考えると、今後数年間という単位で見ても、保育士(ECE)の需要は引き続き高い状態が続く可能性が高いと考えられます。
これは、これからカナダでキャリアチェンジを考えている人にとって、注目しておきたいポイントです。
キャリアチェンジで永住権へ!保育士(ECE)を目指す4つのポイント
これからカナダでの永住権を目指す人にとって、保育士(ECE)という職種にはどのような可能性があるのでしょうか。現在、日本などで別の仕事をしている人でも、カナダのカレッジなどで専門的に学び、保育士(ECE)としてのキャリアをスタートするという方法があります。
【ポイント1】カレッジ進学から保育士(ECE)として永住権を目指すルート
一例としては、以下のようなキャリアプランです。
- カナダのカレッジでEarly Childhood Education(ECE)プログラムを学ぶ
- 卒業して、保育士(ECE)として働くために必要な資格・登録を取得する
- 卒業後のポストグラデュエートビザ(PGWP・ポスグラ)を利用してカナダで就労する
- 保育士(ECE)としてカナダでの職歴を積む
- 条件を満たしたうえでカナダ永住権を目指す
ここで注意したいのは、「ECEを学べば必ず永住権が取得できる」という意味ではないということです。永住権の要件は、その時点の移民制度、年齢、英語・フランス語力、学歴、職歴、カナダでの就労経験、州ごとの移民制度などによって変わります。
したがって、「永住権を取るために保育士になる」という単純な考え方ではなく、「需要が見込まれる職種にキャリアチェンジし、カナダで職歴を築きながら、将来的な永住権を目指す」というキャリア設計として考えることが重要です。
【ポイント2】ECEプログラムはPGWP(ポスグラ)対象分野
カナダのカレッジに通って卒業後にポストグラデュエートビザ(PGWP:ポスグラ)を取得し、カナダで就労するルートを考える場合、現在のPGWP制度についても確認しておく必要があります。
2024年11月1日以降にStudy Permitを申請する学生のうち、学位課程ではないプログラムを卒業する場合、原則としてPGWPの対象となる分野を修了する必要があります。現在のカナダ移民局(IRCC)の対象分野を見ると、Early childhood education and teaching(CIP 13.1210)は教育分野のPGWP対象分野に含まれています。
そのため、ECEプログラムで学ぶことは、保育士としての専門知識やスキルを身につけるだけでなく、卒業後にPGWPを利用してカナダで就労するルートを検討できるという点でも注目できます。
ただし、PGWPは「ECEを学べば必ず取得できる」というものではありません。学校がPGWP対象のDLI(Designated Learning Institution)であるか、プログラム自体が対象となっているか、申請時期や語学要件など、複数の条件を満たす必要があります。また、PGWP制度は今後変更される可能性もあります。そのため、カレッジやプログラムを選ぶ際には、「ECEだから大丈夫」と考えるのではなく、入学・卒業・PGWP申請を行う時点の最新要件を確認することが重要です。
【ポイント3】「2年間カレッジで学ぶ→保育士として働く」というキャリア
キャリアチェンジとして保育士(ECE)を目指す場合、カナダのカレッジで2年間程度のECEプログラムを修了するルートも選択肢になります。もちろん、プログラムの期間や卒業後に取得できる資格・登録制度は、学校や州によって異なります。しかし、カレッジで専門的に学ぶことで、以下のようなキャリア設計を考えることができます。
- ECEとして必要な知識を身につける
- 実習を通じてカナダの保育現場を経験する
- 卒業後の就職につなげる
- PGWPを利用してカナダで働く
- 保育士(ECE)としてカナダでの職歴を積む
- 将来的なカナダ永住権申請を検討する
特に、現在の仕事を続けていてもカナダで永住権につながるキャリアを作ることが難しいと感じている人にとっては、「カナダで新しい専門職を学び直す」という選択肢を検討する価値があります。
もちろん、学校に通うための学費や生活費が必要になりますし、卒業後に必ず希望する仕事に就けるわけでもありません。それでも、カナダで新しいキャリアを一から作りたい人にとって、ECEは比較的明確なキャリアパスを設計しやすい分野のひとつです。
【ポイント4】自分で「ファミリーデイケア」を経営・起業する選択肢も
保育士(ECE)としてのキャリアを考える場合、必ずしも保育施設に雇用されて働くことだけが選択肢ではありません。
カナダには、州によってFamily Day Care(ファミリーデイケア)と呼ばれる形態があり、一定の認可・登録要件を満たすことで、自宅の一部を利用して子どもを預かる保育事業を運営することができます。これは、特に自分自身も子育てをしながら仕事をしたい人にとって、検討できる働き方のひとつです。例えば、自宅で自分の子どもを育てながら、他の家庭の子どもを預かって保育を行うことで、子育てと仕事を組み合わせた働き方を実現できる可能性があります。
もちろん、ファミリーデイケアを開設するための資格、登録・認可、預かることのできる子どもの人数、住宅に関する条件などは州や地域によって異なります。そのため、実際に開設を検討する際には、その地域の最新の制度や要件を確認する必要があります。
しかし、キャリアという視点で考えると、ファミリーデイケアにはもうひとつ面白い可能性があります。自分で小規模なファミリーデイケアを運営する経験を積み、将来的にはより大きなデイケアセンターの経営へとステップアップするというキャリアです。例えば、以下のようなキャリアパスが考えられます。
- カナダのカレッジでECEを学ぶ
- 保育士(ECE)として就職し、現場経験を積む
- ファミリーデイケアを開設・運営する
- 保育だけでなく、事業運営やスタッフ管理などの経験を積む
- 将来的に大規模なデイケアセンターの経営を目指す
もちろん、これは誰にでも適したルートというわけではありません。保育そのものが好きであることに加え、事業運営や人材管理、経営にも興味がある人向けのキャリアと言えるでしょう。
一方で、カナダで長期的に生活していくことを考えた場合、「保育士として雇われて働く」というところから、その先のキャリアまで考えられることは、ECEという職種の魅力のひとつです。永住権取得をひとつの目標としながら、まずはECEとしてカナダで経験を積み、その後は自分自身で事業を立ち上げる。このように、「永住権を取得するための職種」ではなく、「カナダで長期的にキャリアを築くための職種」としてECEを考えることもできるでしょう。
【実例】カナダで保育士として働き、永住権を取得した方の体験談
白石ビザJPカナダでは、これまでも保育士(ECE)としてカナダで働き、永住権を取得された方のサポートを行ってきました。実際に、当社では保育士としてカナダでキャリアを築き、永住権を目指す方向けに、カナダの保育士事情や永住権への道のりを紹介するページを公開しています。
参考ページはこちら:「保育士でカナダ永住権を実現」
こちらのページでは、保育士の需要やカナダでのキャリア形成、未経験からカレッジで学び、保育士として働くルートなどについて詳しく紹介しています。これからカナダでキャリアチェンジを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
「カレッジ→保育士→永住権」を経験した方のインタビュー
実際にカナダで保育士(ECE)として働きながら永住権を取得した青木拓海さんのインタビューも掲載しています。 青木さんは、日本の大学を卒業後、海外での経験を経てカナダへ移住。その後、カナダのカレッジでECEを学び、保育士として働きながら永住権を目指しました。
インタビューでは、なぜ保育士という職種を選んだのか、ECEプログラムでの学習、就職活動の進め方、実習から就職につながった経緯、保育士として働く中で感じたこと、永住権取得までのプロセス、男性保育士として感じたやりがいなどについて、具体的にお話しいただいています。
特に、青木さんが「永住権を取るためだけの仕事」として保育士を選んだのではなく、実際に現場で働く中で保育士としてのやりがいや適性を感じ、キャリアとして継続していきたいと考えるようになった点は、これからECEを目指す方にとって参考になるのではないでしょうか。
インタビュー記事はこちら:「カナダで保育士として働き永住権取得した青木さん|男性保育士として見つけたやりがい」
保育士へのキャリアチェンジを検討している方には、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。
永住権のためだけではなく「カナダで長く続けられる仕事」かどうかも重要
カナダで永住権を目指す場合、「どの職種なら永住権につながりやすいか」という視点はもちろん重要です。しかし、それだけで仕事を選ぶことはおすすめできません。永住権を取得するまでには、学校で学ぶ期間、就職活動、就労経験を積む期間など、ある程度の時間がかかります。
そのため、「永住権を取るためにできる仕事」ではなく、「永住権を目指しながら、将来的にもカナダで続けていきたいと思える仕事」という視点で職種を選ぶことが大切です。
ECEは、子どもたちの成長を支える仕事です。もちろん、誰にでも向いている仕事というわけではありません。子どもや保護者、同僚と英語などでコミュニケーションを取りながら働く必要があり、責任も伴います。「永住権につながりそうだから」という理由だけで選ぶのではなく、子どもと関わることが好きか、保育という仕事をキャリアとして続けたいと思えるかをしっかり考える必要があります。
その一方で、子どもと関わることが好きで、カナダで新しいキャリアを築きたい人にとっては、保育士(ECE)は非常に魅力的な選択肢になり得ます。
将来のキャリアから逆算して「今」の選択をしよう
カナダの移民政策は頻繁に変わります。過去に永住権で有利だった職種が、将来も同じように優遇されるとは限りません。そのため、「ECEなら将来も必ず永住権に有利」と考えるのは適切ではありません。
しかし今回の政府発表からも分かるように、カナダでは保育サービスを拡大するとともに、それを支える保育士(ECE)の人材確保・定着にも力を入れています。この構造を考えると、これからカナダでキャリアを作り、長期的に生活していきたい人にとって、保育士(ECE)は今後もしばらく注目しておきたい職種のひとつと言えるでしょう。
特に、以下のような希望や悩みを持つ方には、保育士(ECE)をキャリアの選択肢として検討することをおすすめします。
- 日本で今の仕事を続けてもカナダでのキャリアにつながりにくい
- カナダで新しい専門職にキャリアチェンジしたい
- 学校に通って資格・専門知識を身につけ、その後カナダで働きたい
- 仕事と永住権の両方を考えてキャリアを設計したい
もちろん、移民制度やPGWPの要件は今後も変更される可能性があります。カナダで学校に通うことを決める前に、その時点でのPGWP要件、学校・プログラムの適格性、州ごとのECE資格制度、そして将来的な永住権の可能性をまとめて確認することが重要です。
「どの学校に行くか」から考えるのではなく、「将来カナダでどのような仕事をし、どのようなキャリアを築いて永住権を目指すのか」を先に考える。それが、これからカナダへの移住を目指す人にとって、より現実的なキャリア設計につながるのではないでしょうか。
「自分にはどんな選択肢があるのか」「今の職歴からどうやってキャリアチェンジすればいいか」と迷われたら、ぜひ白石ビザJPカナダへご相談ください。カナダ政府公認の移民コンサルタントが、最新の移民局の動向を踏まえ、あなたに最適なカナダ永住権へのプランをご提案いたします。
このニュースはカナダ政府の公式情報を元に白石ビザJPカナダが内容を整理し、わかりやすくまとめたものです。
出典(発表日:2026年8月10日):Government of Canada launches new initiative to support early childhood educators(英語)
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