カナダ政府は、移民政策の成果を評価する大きな指針として、エクスプレスエントリーの年間レポートを毎年発表しています。その2020年版(つまり昨年です!)が、1年後の2021年12月13日になって、やっと発表となりました。
レポート内容は、カナダが今どんな人材を必要とし、カナダに迎え入れるために永住権を発行しているか、またどのような人たちカナダ移住を目指しているかが、様々な角度から数字を引用してまとめられています。
今後カナダ永住権取得を目指す人にとって気になる内容、実際のレポートは非常に長いものですが、特に注目すべき点や日本人の方が興味を持たれそうな部分を抜粋して解説します。
コロナ禍の影響を大きく受けた2020年
ITA発給数は増えたが、実際の永住者数は大きく減少
2020年でまず特筆すべきは、前年2019年に比べて申請への招待数(ITA)が増えたのに対し、実際の永住者数は3年連続で数が減ったことです。主申請者のみでなく、家族(配偶者や子供)と一緒に永住する人がいることを考えると、通常ではITA発給数より新永住者の数が多くなるはずなのです。ですが2020年の実績では、新型コロナパンデミックの影響により、永住者となった数が少なかったのです。
数字で見ると、ITA発給数は、2019年が85,300人だったのに対し、2020年は107,000人に増えています。実際に永住者となった数は、2019年がITA発給数を上回る109,000人だったのに対し、2020年では63,923人と大幅に減少しています。
審査期間の長期化
次は審査期間がどうだったか見てみましょう。エクスプレスエントリー経由での永住権審査は6ヶ月で終わらせることを目標に掲げています。ところが、2020年の実績では、その80%以上が審査に6ヶ月以上かかりました。平均の審査期間は9ヶ月(2019年の平均は8ヶ月)で、6ヶ月以内に審査が終了したのは、わずか51%のみでした。
審査にかかった期間(月数)の推移
2020年のITA発給の傾向
カナダ国内在住の申請者に優先してITA発給
新型コロナのパンデミックが始まって以降、カナダにすでに住んでいて渡航制限などの影響を受けないであろうCEC(カナディアンエクスペリエンスクラス)とPNP(州ノミネーションプログラム)の2つのカテゴリーを優先的に招待するようになりました。2019年にはカナダ在住のエクスプレスエントリー登録者への招待が47%だったのに対し、2020年は63%まで増えています。
居住国別ITA発給
対象者を居住地となる国別でみると(国籍ではなく、エクスプレスエントリー登録時の居住国)、最も多く招待を受けた国は順にカナダ、インド、アメリカ合衆国、ナイジェリア、アラブ首長国連邦、パキスタンでした。
性別、カテゴリー、職種の傾向
性別では、男性の方が女性より多くエクスプレスエントリープロフィールを作成していました。永住権カテゴリー別に見ると、CECカテゴリーの申請者が最も多く、FST(フェデラルスキルドトレード)カテゴリーが一番少なかったです。 職種別では、ソフトウェアエンジニアやコンピュータプログラマーなど、IT系が多かったです。これを、カナダでのジョブオファーがあるというボーナスポイントを持っている人に限って見ると、以下の図のようにIT系と飲食業界の職種が混合しており興味深いです。
ジョブオファーありの人へのITA発行数の推移と職種
その他の注目点
- 2019年には、カナダの学歴がある人が28%招待を受け取ったのに対し、2020年には42%に上がりました。
- 2020年には全部で37回のドロー(ITAを発給する日)があり、一つのカテゴリーに絞ったドローもCEC10回(招待ポイントは、431 ~ 467)、PNP10回、FST1回(415点)ありました。
- 2020年の全プログラムのドローの平均招待ポイントは472点で、2019年の平均461点から上がり、エクスプレスエントリーの敷居が高くなったといえます。
- ケベック州以外へのフランス語スピーカー移民を4.4%増やすという目標を掲げていることから、フランス語スピーカーや英語とフランス語のバイリンガルへのボーナスポイントも増えました。
- 2020年には、実に3分の2の申請者がオンタリオ州をカナダでの希望都市として挙げました。2019年に比べてサスカチュワン州、ブリティッシュコロンビア州、ニューブランズウィック州を選ぶ人は増加しましたが、アルバータ州やノバスコシア州に住みたい人は減少しました。
- 申請時の申告に比例し、2020年には永住権を取得した人の大多数がオンタリオ州に移民しました。
ビザJPカナダは今後もエクスプレスエントリーの動きを注視します
カナダ政府発表のエクスプレスエントリー2020年レポートの全文は、以下より閲覧することが可能です。
– Express Entry Year-End Report 2020
とてもボリュームのあるレポートで、専門用語も多いため一般の方には難しい情報かもしれません。ですが、今後の移民動向を考える上で多くのヒントがあり、私たち移民コンサルタントはここから様々なことを読み取り、そしてこれからカナダ永住権取得を目指したいお客様へのアドバイスに反映していきます。
2021年の終盤は、すっかり動きが止まってしまったエクスプレスエントリーですが、新しい年にはまた新しい動きがありそうです。カナダ永住権取得をご検討の方は、ぜひ早いうちからビザJPカナダにご相談ください。
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