昨年実施されたカナダ総選挙後の2021年10月26日、ジャスティン・トルドー首相は新内閣メンバーを発表しました。そこで、2019年から移民大臣を務めていたMarco Mendicino氏に代わり、ショーン・フレイザー氏が新移民大臣に任命されました。今日はこの方がどんな方なのかをご紹介します。
ショーンフレイザー新移民大臣の経歴
地方沿岸の小さな町出身の若きリーダー
ショーン・フレイザー新移民大臣は37歳と、歴代の移民大臣では最も若手です。もともとノバ・スコシア州で弁護士をしていました。彼が国会議員に初当選したのは2015年で、その後2019年と2021年にも再選しています。
政界に入る前のフレイザー氏は、弁護士として商事訴訟や国際紛争解決に携わりました。Dalhousie大学で法学士号を取得、オランダのLeiden大学では公的国際法にて修士課程を修了、Francis Xavier大学では理学士号を取得しました。アルバータ州のカルガリーで弁護士として、環境人権保護に従事していたこともあります。
弁護士時代は、育った町(ノバ・スコシア州 Merigomish)から4800キロも離れた都市の弁護士事務所で働いていました。彼だけでなく、学生時代の友人も5人の姉妹も皆、生まれた町を離れていました。弁護士としての仕事は充実していましたが、若い人や家族が生まれ育った町に残って仕事をするために地域社会の為に何かしたいと思い始めたそうです。
議員として多岐に渡る分野で活躍、アトランティック地方パイロット施行に貢献
そこで、彼は2015年にホームタウンも含む『Central Nova』という選挙区からカナダ自由党の候補者として出馬します。保守党が優勢を占めていましたが、見事に選出され、過去2回の選挙でも勝利しています。そして、2021年10月26日、トルドー首相により、新移民大臣に任命されました。
移民大臣に任命される以前のフレイザー氏は、財務大臣の議会秘書や、中流階級の経済振興を担うMiddle Class Prosperity(後に廃止)大臣の議会秘書、さらにその以前は環境と気候変動問題に取り組む Environment and Climate Change 大臣の議会秘書も務めました。
また今回の任命のちょうど5年前、アトランティック地方にもっと移民を受け入れることを、下院(House of Commons)在任中に提唱しました。ノバ・スコシア州はカナダでも高齢者がもっとも多い地域の一つであり、若い人たちは仕事を求めて他州へ移ってしまうのです。そこで彼はアトランティック地方の労働人口を増やす為には、確たる移民政策が最善であると主張。その数年後、アトランティック地方パイロットという試験的プログラムが実現され、現在そのプログラムはパイロットではなく永久的な移民プログラムとなりました。
新移民大臣に託された今後の課題
申請処理の迅速化とバックログの処理
新型コロナのパンデミックに突入してから、カナダ移民局は数えきれないほどのバックログ(未処理案件)を抱えることになりました。今夏、トロントスターの報道によると、バッグログ件数は永住権申請が561,000件、一時滞在ビザ申請が748,000件、カナダ市民権の申請書類が376,000件もあるとされています。これに、データ入力がまだされていない未処理の郵送申請の書類の数を含めると、実際のバックログ件数はもっと多いことになります。
また、アフガニスタン情勢問題が勃発して以来、40,000人のアフガン難民を受け入れることとなったため、そちらにも移民局のリソースが割かれています。さらには、新永住権(TR to PR)パスウェイに関わる7,300件の追加申請書類も処理する必要があります。フレイザー新移民大臣は、これらに対処をするために、すでに人材を投与したそうです。
国外からの移民をいつ再開するか?
ここ最近では、エクスプレスエントリーの招待(ITA発給対象)はすでにカナダに住んでいる人を優先するよう対策が取られてきました。カナダ国外からの移住者がメインとなるFSWカテゴリーも含めた全プログラムの招待をいつ再開するかも、フレイザー新移民大臣がこれから決めなければなりません。
2015年からカナダ自由党が推し進めている移民政策、この若きフレイザー新移民大臣のもとで、これからも順調に目標を達成していくことが期待されます。
インタビュー記事
ショーン・フレイザー氏は、今後取り組んでいく移民政策に対する大臣としての考えを、移民大臣就任後のインタビューで語っています。発表された記事2つを抜粋意訳して紹介します。
Bloomberg掲載インタビュー
「新移民大臣、今後の移民受け入れ目標値を上げることも検討」
Canada Open to Ramping Up Record Immigration, New Minister Says
2021/11/18 ※就任後初のインタビュー記事
カナダの労働人口不足問題の解決は、移民の数を増やすことが重要とされてきました。ですが、パンデミック下の渡航規制などにより、カナダ国外からの永住予定者が渡航できず、さらに深刻な労働不足に陥っています。
カナダ政府がこれまでに発表している新移民受け入れ目標数は、2021年が401,000人、2022年が411,000人、2023年が421,000人です。私はこれに、カナダの企業や地域社会が必要とするのであれば、今後目標値を上げてもっと多くの移民を受け入れることも視野に入れています。
2021年目標 401,000人 は順調に達成
2021年の10月だけでも46,000人以上が永住者となりましたが、そのほとんどは既にカナダに住んでいる申請者でした。つまり、パンデミック以降の新永住者の大多数が、一時滞在者(学生や就労者)のステイタスでカナダ国内にすでに滞在していた人たちであり、そのステータスが永住者に変わったという状況です。
逆にいえば、カナダ国外からの永住者は少数のため、移民が増えてもカナダの労働人口の増加には貢献していないことになります。統計によると、昨年度はカナダの人口は0.5%増加したのみ、これは第一次世界大戦以降、最も増加率が低い年でした。パンデミックでなければ、本来カナダは大多数の移民をカナダ国外に居住する人から受け入れてきたのです。
2021年1月~10月までに永住ステータスとなった人は313,838人、目標達成には、あと2ヶ月で87,000人の永住権申請者がランディングを終える必要があります。※その後、カナダは2021年目標数を達成しました。
【関連記事】2021年の新移民受け入れ数、史上最多40万1千人超で本年度の目標達成
トロントスター掲載インタビュー
「コロナ禍によるシステム混乱の収束を担う新移民大臣」
Soaring backlogs, disgruntled applicants — Canada’s immigration system has been upended by COVID-19. This is the man in charge of fixing it
2021/11/18記事
新移民大臣として様々な挑戦が待ち受けている
180万件ものバックログを片付けなければなりません。このバックログは一夜のうちにできたものではないので、一夜で解決できるわけでもありません。ですが一日も早く解決し、カナダへの永住を夢見ている家族の方たちを迎え入れたい気持ちです。
カナダ市民権の申請がオンライン化されたことですし、何が審査を遅らせているのか問題点を洗い出したいとも思っています。また、ファミリークラスの審査をカナダ国外で待っている家族が一時的にカナダへ入国することについて、これを拒否する理由がないとも考えています。
10月に新移民大臣に任命されて以来、最も重要視しているのは、アフガン難民の受け入れです。目標4万人に対し、今のところ3,500人しかカナダに受け入れられていません。カナダの人々の多くは、過去にカナダがシリア難民を受け入れた時と同様のことを政府に期待していると理解していますが、シリアとアフガンとは状況が異なり、非常に難しく、今この状況は不本意に思っています。
とはいえ、これから移民システム改善に向けて、絶大なチャンスに恵まれていると思っているので、とても楽しみです。
新移民大臣の今後の動向にも注目!
新移民大臣のショーン・フレイザーさん、さまざな実績もありとても実行力のある方のようですね。若い力で、より迅速に新しい政策を進めてくれることを期待したいです。
今後の移民政策・移民局の動きが気になる方は、トルドー首相のTwitterはもちろんですが、フレイザー大臣のTwitterもフォローしておくと良いですよ。フレイザー大臣も結構イケメンです!
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