カナダ移民局(IRCC)は2026年9月17日、雇用主限定就労ビザ(Employer-specific Work Permit)の審査において、ジョブオファーが真正なものであるかについての審査のガイドラインを大幅に更新しました。
今回の更新によって新しい審査要件が導入されたというよりも、これまで移民法(IRPR)第200条(5)に基づいて行われてきた「Genuineness of the Offer of Employment(ジョブオファーの真正性)」の審査について、審査方法や確認事項、具体例、追加資料を求める場合の手続きなどが、より詳細に明確化されたものです。
ジョブオファーの「真正性」とは?
雇用主限定就労ビザの申請では、雇用主からジョブオファーが出ているというだけではなく、そのジョブオファーが実態のある真正なものであることが求められます。
移民局は、主に次の4つの観点から審査を行います。
- 雇用主が、実際に商品またはサービスを提供する事業を行っていること
- ジョブオファーの内容が、その会社の合理的な人材ニーズと一致していること
- 雇用主が、提示した給与、勤務時間、福利厚生などの雇用条件を実際に提供できること
- 雇用主または採用に関与したリクルーターが、雇用・採用に関する連邦および州・準州の法律を遵守していること
これらのうち1つでも満たしていないと判断された場合、就労ビザが却下される可能性があります。
「その会社に本当にそのポジションが必要なのか」も審査対象
今回更新されたガイドラインでは、会社の事業内容や規模と、採用しようとしているポジションとの整合性についても具体的な例が示されています。たとえば、ケータリング会社がRoofer(屋根職人)を採用する場合や、従業員10名の会社が短期間に6人目のSupervisorを採用しようとしている場合、フランチャイズレストランがフルタイムのBusiness Analystを採用する場合などは、そのポジションが会社の合理的な人材ニーズに合っているのか、追加確認が必要となる例として挙げられています。したがって、会社の事業内容から仕事内容との関係が分かりにくい場合や、会社の規模に対して管理職の人数が多い場合などには、「なぜこのポジションが必要なのか」を合理的に説明できることが重要です。
雇用主に「給与を支払う能力」があるかも確認
移民局は、雇用主がジョブオファーに記載した給与や勤務時間などの条件を、就労期間を通して実際に提供できるかどうかも確認します。必要に応じて、T4 Summary、法人税申告関連資料、財務諸表、Workers’ Compensation関連資料、Business Contractなど、事業の運営状況や財務能力を確認するための資料が求められる場合があります。
移民局が示している例では、前年の利益が$10,000である新しい会社が、外国人労働者に年間$45,000の給与を提示しているケースについて、雇用主が十分な資金力を証明できなければ、提示した雇用条件を履行できないと判断される可能性があるとされています。特に新設企業や小規模企業が外国人労働者を採用する場合、ジョブオファーの内容だけではなく、その雇用を実際に維持できる事業実態や財務能力についても説明できるよう準備しておくことが重要です。
LMIAが承認されていても、就労ビザ審査で確認される可能性
今回のガイドラインでは、LMIA就労ビザとそれ以外の就労ビザについて、それぞれの審査方法も明確化されています。LMIA就労ビザでは、カナダ労働省(ESDC)がLMIAを審査する際にジョブオファーの真正性について確認しています。
ただし、ポジティブLMIAが発行されている場合でも、就労ビザ申請を審査する移民局の審査官がジョブオファーの真正性について疑問を持った場合には、改めて確認を行うことができます。
一方、LMIAが不要な就労ビザでは、Employer Portalを通して雇用主が提出したOffer of Employmentをもとに、移民局がジョブオファーの真正性を審査します。CPTPPなど、LMIA免除の雇用主限定就労ビザを申請する場合にも、この審査は重要となります。
移民局が雇用主へ直接追加資料を求める場合も
審査官がジョブオファーの真正性について懸念を持った場合の手続きについても、今回の更新で詳しく説明されています。移民局からProcedural Fairness Letter(PFL)が発行され、どの点について懸念があるのかが示されたうえで、雇用主が移民局へ直接、事業実態や財務状況などを証明する資料の提出を求められる場合があります。
また、移民局の審査官は、企業のWebサイト、州政府等の公開情報、Googleなどのインターネット上の情報を利用して事業実態を確認することもできます。申請者が通常知り得ない外部情報(extrinsic information)を不利な判断の根拠として使用する場合には、その情報に対して回答する機会を与えるためのProcedural Fairnessの手続きが必要であることも、今回のガイドラインで明確にされています。
カナダ入国時にも再確認される可能性
カナダ国外からの申請やカナダ国内からの国外申請で、就労ビザ申請が承認され、承認レター(Letter of Introduction)が発行されている場合でも、その後ジョブオファーの真正性について新たな情報が判明した場合には、カナダ入国時に入国管理局(CBSA)の審査官が雇用主へ確認を行うことがあります。入国時点で就労ビザの要件を満たしていないと判断された場合には、就労ビザが発給されない可能性があります。
白石ビザJPカナダからの一言
今回の変更は、雇用主限定就労ビザについて、新しい審査基準が追加されたというものではありません。しかし、移民局がジョブオファーの真正性をどのような観点から確認するのか、また疑問が生じた場合にどのような追加確認を行うのかが、これまで以上に具体的に示されました。
特に、新設企業や小規模企業からのジョブオファー、会社の事業内容とポジションの関係が分かりにくいケース、会社規模に対して管理職が多いケース、比較的高い給与を提示するケースなどでは、単にジョブオファーを用意するだけでなく、「なぜその人材が必要なのか」「その雇用条件を継続して提供できるのか」を客観的な資料とともに説明できるよう準備しておくことが重要です。
また、LMIAが承認されている場合でも、就労ビザが自動的に承認されるわけではありません。LMIA免除となるCPTPPなどについても、Employer PortalにOffer of Employmentを提出すれば十分というわけではなく、雇用の必要性や会社の事業実態、給与支払能力などを含め、申請全体として整合性のある内容にする必要があります。
白石ビザJPカナダでは、LMIA就労ビザ申請だけでなく、CPTPPをはじめとするLMIA免除の就労ビザ申請についても、雇用主様・申請者様双方の状況を確認しながら申請をサポートしています。
このニュースはカナダ政府の公式情報を元に白石ビザJPカナダが内容を整理し、わかりやすくまとめたものです。
出典:Assessing the genuineness of the offer of employment on a work permit application(英語)
移民コンサルタント
白石 有紀 (Yuki Shiraishi)
アメリカミシガン大学にて学士取得後、ニューヨークでマーケティングコンサルタントとして働く傍らニューヨーク市立大学MBAコースに就学。その後日本での旅行会社マネージャー経験を経て、カナダでのイミグレーションの仕事へ。2010年から移民コンサルタントとして活躍。白石ビザJPカナダ代表。
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