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2025年に入ってから、カナダでは一時滞在者(=就労ビザ、学生ビザなどで滞在する外国人)の到着数が大幅に落ち込んでいます。これに伴い、国全体の人口成長もかつてないほど鈍化しており、こうした変化は、近年強化されてきた移民政策の影響と無関係ではありません。
この記事では、最新データをもとに現状を整理し、これからの見通しと、ビザ申請を検討する方々への示唆を探ります。
学生・就労ビザ保持者数が急激な落ち込み
最新のカナダ移民局(IRCC)のデータによると、2025年7月に新たにカナダに到着した就労者は18,500人(前年同月比 –37 %)、新たな留学生は7,685人(前年同月比 –55 %)と、大幅な減少が確認されています。
また、2025年1〜7月累計では、就労者・学生双方の新規到着者数が2024年比で 235,070人 少ない状況です。
これが意味するのは、カナダ政府が「一時滞在者数を国民全体の5%未満に抑える」という目標を掲げ、政策的に締め付けを強化してきた結果が確実に影響を及ぼし始めている、ということです。
実際、2025年6月時点での一時滞在者(学生ビザ保有者+就労ビザ保有者などを含む総数)は、2024年8月のピーク時点から減少傾向が続いています。
人口成長増加が停滞、ビザ制度変更の影響が表面化
こうした滞在者の抑制傾向は、国の人口統計にも明瞭な変化をもたらしています。2025年第2四半期(4月1日〜7月1日)の人口増加数は約47,098人(成長率0.10 %)にとどまり、過去数年と比べても飛躍的に低い伸びとなりました。
特に、移民(永住・学生ビザ・就労ビザを含む)が人口増加に寄与する割合は、従来より大きく低下。2024年第2四半期には人口増加の95.3 %を移民が占めていたのに対し、2025年では71.5 %にまで落ちています。
また、非永住者(=一時滞在者を含む非市民的在留者)の数は3四半期連続で減少しており、2025年7月1日時点では3,024,216人(総人口の約7.3 %)となっています。
このような動きの背景には、2024年以降に断続的に実施されてきた以下の制度変更があります。
- 学生ビザ申請数の上限導入
- 就労ビザ(特にLMIAのLow Wage Stream)の発給要件の厳格化
- 配偶者就労ビザ要件の制限
- Post-Graduation Work Permit(卒業後の就労許可)制度の見直し
- 一時滞在者受入枠の受け入れ計画値設定(2025年:673,650人、2026年:516,600人、2027年:543,600人)
これらの措置は、住宅需要や社会サービスへの負荷を抑制する目的で導入されたと見られていますが、結果として人口成長を抑える方向に働いています。
なぜカナダは「拡大」から「調整」へ舵を切ったのか
なぜカナダは「拡大から調整」へ向かっているのか。その背景にはいくつかの要因が考えられます。
- 社会インフラ・住宅需給の逼迫
都市部を中心に住宅価格の高騰、交通・教育・保健・福祉といった社会サービスの需要増加が顕在化しており、無制限な移民拡大は持続性に疑問を抱かれてきました。 - 政策の持続可能性と政治的圧力
移民・一時滞在者の急増は、地域格差や既存住民との摩擦を生むリスクを伴うため、政府として慎重な調整が求められていたとの見方があります。 - パンデミック後の回復・調整フェーズ
COVID-19を経て、移動制限の緩和や回復需要拡大があったものの、それと並行して制度を見直す機運も高まりました。 - 長期的な人口管理戦略の見直し
ただ単に「多くの人を受け入れる」時代から、「質の高い移民・一時滞在者を戦略的に選ぶ」方向へシフトし始めた可能性があります。
今後の移民政策のシナリオと注意点
この先、カナダの移民・滞在制度がどのような方向をとるかを予測すると、以下のような展開が想定されます。
- 一時滞在ビザ枠のさらなる調整
今後もビザ発給数の調整、要件見直しが続く可能性が高く、特に留学生・低賃金就労者分野での規制強化が懸念されます。 - 永住権制度へのフォーカス強化
一時滞在を通じて永住申請につなげるパイプラインの再設計や条件見直しが進む可能性があります。 - 地域移民・地方誘致への重点化
大都市に集中しがちな移民を分散させ、地方・中小都市への誘致策を強める動きが加速するかもしれません。 - スキル・産業ニーズ重視の選抜強化
特定の産業や技能を持つ人材、投資誘致型人材などを優先する選抜基準がより顕著になる可能性があります。
ただし、政策は政権交代や社会情勢の変化(経済状況、人口動態、世界の移民事情等)に敏感に反応しうるため、今後予断を許さない展開も十分あり得ます。
ビザ取得を目指す人が今すぐ準備すべき4つのポイント
こうした流れを踏まえると、今後ビザを通じてカナダに滞在・移住を考える方には、以下の点を念頭に置くことをおすすめします。
- 早めの準備・申請が鍵に
制度が厳格化されていく可能性が高いため、余裕をもって希望するビザタイプの要件を満たすよう準備を進めておくこと。 - 選択肢を広げておく(代替ルートの検討)
たとえば、学位取得を利用した就労ルート、あるいは地方州(PNP = 州提名プログラム)を活用する道など、複数のルートを視野に入れること。 - スキル・専門性をアピールする準備
競争力を高めるため、英語・仏語力、職業経験、資格などのブラッシュアップが重要となるでしょう。 - 最新情報の取得
移民法・ビザ制度は変更が頻繁に入るため、IRCC発表、州政府の移民政策、専門機関の情報を定期的に確認することが不可欠です。ビザJPカナダのSNSでも速報を流します。
おわりに|「戦略と準備」が求められます
ここ数年、カナダは「移民拡大」から「制度の調整」へと舵を切りつつあります。2025年に顕在化した一時滞在者数の急落と人口増加鈍化は、その変化を象徴する現象です。とはいえ、ビザ・移民を望む人にとって道が閉ざされたわけではなく、むしろ今後は「戦略と準備」がこれまで以上に重要になる時代とも言えます。
ビザJPカナダとしても、こうした制度変化を注意深くフォローしていきたいと思います。必要であれば、本稿の見出し・段落構成の調整や補足解説、図表挿入などのお手伝いも可能ですので、ご遠慮なくお申し付けください。
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